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COLUMN

いい会社づくり通信

B 面目標の設定がイノベーションを生み出す

2017.09.01岡村 衡一郎

 活性化している企業には、A 面とB 面の二つの目標があります。

 単年度目標がA面、多くの企業で活用しているマネジメントツールです。
しかし、一年一年の目標をきっちり達成すれば、他社と違いがつくれるのか、選ばれるホテルへ進化を遂げるかと聞かれれば、不十分な感覚ではないでしょうか。
提供価値の深化を形にしている企業は、A 面の必達目標とは別のB面にあたるチャレンジ目標があります。
複数年かけて近づけていくターゲットを持っているのです。

 代表的事例がトヨタ自動車のありたい姿に近づけるB 面活動です。
彼らのオペレーションは、限りなくイノベーション。
例えば、新型プリウスはチャレンジ目標ありきの仕事のたまものです。
燃費、運転感覚、製造コストを世界一レベルに持っていく開発ターゲット、いわば、意図を掲げ近づけていく取り組みの産物です。
「PRIUS! IMPOSSIBLE」不可能を可能にした車というキャッチコピーが物語っているように、
日々の仕事で変化を起こしているのです。

 ホテル業で言えば、稼働率や客単価という目標は当然持ちながらもお客さまにとってどんな存在となるのかを掲げ近づけていく持続的取り組みと置き換えられます。
自分たちの理想に近づけるアクションをどう取るのか。
そして、分かったことを次の実践に生かす。
創意工夫とオペレーションが密接につながっている状態です。

 例えば、東京・汐留にあるパークホテル東京は、「日本の美意識が体感できる時空間になる」と
ありたい姿を掲げ、A面とB面の実践を限りなく一致させています。
中長期の改装計画も日々のお出迎えの工夫も、掲げる旗印に近づけるために一貫した改善がなされています。
ありたい姿を判断基準に、近づけるための創意工夫に敬意を持ってお互いの仕事を高めています。

 多くの企業は働く人の知恵や創意工夫を歓迎しているようで、実は歓迎してはいません。
というのは、単年度目標の達成を意図し働く人に作業をリクエストしているのが実情だからです。
読める値を掲げれば、現場の創意工夫は達成にさほど必要でなくなっていくのです。

 活気がない部門をまたいだ仕事をしない。
これらの問題の多くは、モチベーションの問題やコミュニケーションの問題として処理されやすい。
しかし、目指すものとの連関がなければ、サンクスカードなどの改善策も一時的、部分的好転にとどまってしまいます。
生み出したい価値の方向感、すなわちB 面目標設定がプロ同士の切磋琢磨を促し活力を高めていきます。

 一人一人の仕事に変化を生み出すには、その工夫がなければ近づけない、
達成できないB 面目標の設定にあります。
トヨタ自動車のチャレンジ目標の設定がエンジニアの魂を鼓舞するように、パークホテル東京のなりたい姿がホスピタリティーマンインドに熱を持たせていくように。
ここで世界トップクラスを目指すという方向感が変化の原動力になるのです。

 皆さまのホテルやレストランは何を目指しているでしょうか。
深化は、ありたい姿に近づこうとするエネルギーが生み出すイノベーションです。 

【週刊HOTERES「サービス・イノベーション48手 001」2016.6.3】