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COLUMN

いい会社づくり通信

福山観光旅行の挑戦! ⑴旅行が売れない

2022.02.02岡村 衡一郎

 3号前から本号に渡って企画機能、商品化機能、販売機能の再構築について触れている。
機能の再構築に数回に渡って書いてきたのには次の疑問があるからだ。
市場が右肩上がりの時に分業は効率を発揮する。
成熟社会の日本で、私からみたらどの業種も行き過ぎた分業体制だ。
分業でこれから先やっていけるのか。
今は買い替え需要、ホテル旅館ならば、ブランドスイッチ。
すなわち、お客さまの感動、何の違いを感じて動かなければ選ばれない。

 当然ながら、人がつくったものを、仕入れた人が役割として販売していたとしたら、お客さまの感動は生まれない。
商品の背景を感じ取ることができないから、いつもと一緒のものにすぎない。
初めての購入する商品・サービスなら話は別だが、現在の成熟した環境、一度はつかったことのある商品ばかりで初めての商品を買うのは稀だ。
そして、生活は満たされているから、今、どうしてもほしいものは少ない。

 旅行商品も同様である。
旅行に行くのが初めてならば、旅行会社が工程を決めてくれたパックに参加する。
特に海外旅行は、自分でアレンジするのは大変だからパックとなる。
しかし 3 回目、4回目は、自分でアレンジもできる。
パックツアーを選ぶ目も肥えている。
そのサービスを明確に選ぶ理由がなければ選ばない。
ホテルを繰り返し利用する人にとっても、ブランドスイッチをしたくなるような価値/価格がなければ、いつものところでいいか、となっていく。

 広い意味での買い替えで選ばれるポイントは、成熟した消費者に対する感動の提供ということになる。
一見、難しいと感じる方もいるかもしれない。
しかし次のようなことが感動につながる。
商品をつくった人が、自ら販売していき、商品に込めた想いを伝える。
お客さまの反応にやりがいを感じながらブラッシュアップを繰り返していく。
この当たり前が、過度の分業では難しい。
つくるところと売るところが遠いのだ。

 かつての福山観光旅行もつくるところと売るところが遠かった。
大手旅行会社のパック商品を販売して、福山に住んでいる人の旅行のアレンジが主業務だからである。
それでも福山観光旅行は喜ばれていた。
きめ細かい対応で、独自のアレンジを行なってきたからだ。
特に社員旅行は、企画から進行まで、現地に行って司会なども担当して、社風づくりに役立とうと取り組んできた。
旅行のアレンジは、旅行先のきめ細かい案内や現地からの電話で、困りごとを対応するなどのサービスの評判が良かった。

 消費の成熟に対する対策をきめ細かい対応で選ばれる取り組み。
加えて、自転車が趣味の後継者の漆川さんは、サイクルツーリズムの独自サービスや、トライアスロンの大会をしかけるなどして突破口を拓こうとしていた。
そんな矢先にコロナで、社員旅行はなくなり、熟年の方々の旅行も激減し、自転車イベントや大会の企画ができなくなってしまう。
まさに八方ふさがりの状況となる。

 福山から人を送り出すだけなく来てもらう対策を。
 趣味品の旅行だけでなく必需品として提供できるサービスを。
 自分たちの今まで行なってきた提供価値の逆も真なり。
後継者の漆川さんの生みの苦しみがはじまった。
次号に続く。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 249」2021.12.17】