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COLUMN

いい会社づくり通信

サービス深化に向けたささやかな第一歩

2022.01.05岡村 衡一郎

 サービス業はサービスを売るところ。
当然、サービスは深化していかなければ、お客さまからは選ばれ続けられない。

 私は、年間 10 泊以上させていただくホテルが数件ある。
そのエリアでの仕事があるからなるべく近くで、価値/価格のバランスのよいところを選択する。
そして、年間宿泊回数は、ざっと 80泊になるだろうか。
本コラムの材料となる新規オープンは絶えずチェックし、出張経費の予算内、もしくは、多少の自腹を切って予算を付け足して宿泊先を選んでいる。

 高グレードのホテルには、なかなか泊まれないが、価値と価格の関係を体感していくためにエコノミー、ミドル、ラグジュアリーと、いったりきたりしながら利用させていただいている。
その中でリピートさせていただくのは、背景に、そこに働く人たちの創意工夫が感じ取れるところになっていく。
毎回、ささやかな変化を感じられるからだ。

 朝食のお米などは、意外に盲点なのかもしれないと、80 泊の中で思う。
朝食を強化していこうとした場合のセオリーは、おいしいご飯とみそ汁の探究となる。
フロント回り季節感の演出などは、高単価のホテルのサービスだけの特権ではない。
花一輪をかざる配慮にお客さまを迎え入れる配慮を感じるエコノミーホテルもある。
ただ、訪れる度に新しい取り組みを行っているところは少数派だ。

 先日、ホテル A のスタッフと仕事の創意工夫について、長い時間、対話をさせていただいた。
彼らのサービスは常に一定である。
なぜなら「〇〇しないようにする」はあるのだが「〇〇するために」がないからだ。
クレームを出さない。
お客さま情報を共有して滞りなく進めるなどの指針はあるのだが、その日、その瞬間に達成していこうとする目標があいまいなのだ。

 日々、サービスが深化していく企業はそもそも「クレームを出さない」。
お客さま情報を共有して滞りなく進めるなどは、確認するまでもなく前提になっており、「〇〇するために」や「〇〇になるために」という目標がしっかりと運用されている。
例えばB社では、お客さまと家族のような関係を築いていくことを指針としている。
だからこそ、その場その瞬間にお客さまへの対応に創意工夫がなされていく。

 B 社は、サービス業というサービスを取り扱っている方たちの究極のゴールに向かっていると言えるだろう。
ここまでは、なかなかたどり着けないかもしれないが、できることはたくさんある。
ホテル A のスタッフとは、自分たちが提供できるうるサービスのよいところを、どんな形でいいから伝えていくアクションを日々行なうことにした。

 自分たちの売りを勧めていく中でのお客さまの反応が、次のサービスを生むことにつながる。
明日の朝食のおすすめ、職人品質のお昼の「一品」、恵まれたハードの会議室利用などなどだ。
加えて、お客さまのお迎えの仕方で、ほぼすべてが決まると確認した。
自動チェックイン機を利用している間に、どんなお声がけをしていくのかも一人一人違う形でアプローチしていくことを決めた。

 決められたシステムを滞りなく運用するのではなく積極的に利用していく。
日々、サービスが深化していくホテルになるための第一歩である。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 239」2021.10.1】