2021年活性化のキーワード「仕合せ」
2021.11.15岡村 衡一郎
前回までの4回にわたって、旅館・菊乃家の変革について触れてきた。
繰り返しになるが菊乃家の変化の軌跡は四つの段階があった。
部門間連携をよりよくするための情報共有のし方を変えた初動期。
お客さまの名前を全員で呼ぶアクションを通じて、おもてなしという原点を確認した展開期。
観光業の誉れを目指して地域活性化にも活動を広げる転換期。
そして今、客数ダウンの中弁当販売などの試行錯誤をしながら、親子三代の記念日を支える存在を目指す拡充期を迎えている。
すべては、関わる人のハッピーのために、菊川社長が掲げる理念に向かって、脱皮し続けている変化を繰り返している。
菊川社長のハッピーは、仕事を合せる、仕合せだ。
コロナ渦で、その真価を問われる形になったが、積み上げてきた変化は、新たな商品・サービスに集約されて結果を出しつつある。
市場がダウントレンドになれば、業種業界に関係なく、一番の価値/価格を提供してくれるところにお客さまは集まってくる。
利用頻度が減っていく中、ここ一番で行くところ、買うところをじっくりとお客さまが吟味していくようになるからである。
3月 11日の震災の翌日、都内の繁華街で満席になっていた飲食店は、今も人が入っている。
天ぷらオンリー№ 1、とんかつオンリー№ 1 の飲食店の行列は多少減ったくらいで、お客さまが絶えない。
今、強化していくべきなのは、お客さまの「~してほしい」と自分たちの「~したい」の一点をつくる商品・サービスの拡充にある。
お客さまとの仕合せをつくる媒介となる商品・サービスの改良への妥協なき取り組みが必要だ。
菊乃家では、これから先もなくなりはしない「家族の記念日」に焦点をあてる。
では、自社では何に焦点をあてていく必要があるのだろうか。
難しく考えると難しくなるのだが、以下の要点を押さえて、シンプルに取り組んでいくのが得策だ。
・この先 10 年、市場は減っていくかもしれないがなくならないもの
・今まで取り組みの中でもっとも嬉しかった瞬間に寄与した商品・サービス
・今、個数ベースでもっとも売れている商品・サービス
・今、売上ベースでもっとも売れている商品・サービス
・自分たちの想定ではなかった使い方をお客さまがした商品・サービス
これらのすべての要素を満たすものは、そうはないだろう。
なので、この中のいずれかを満たす商品・サービスを選択してみることをお勧めしたい。
なくならないものは事業継続の前提条件である。
嬉しかった瞬間を支える商品・サービスには技能がつまっている。
個数の一番はお客さまからの量的支持が集まっている。
売上一番はお客さまからの質的支持が集まっている。
お客さまの新たな利用方法には、未来のシグナルがつまっている。
これらのいずれかを満たす商品・サービスは、放っておかなければ未来を切り開いていく力がある可能性は高い。
だが、不思議なもので、未来存在が不確定な商品を挑戦だと思っている人、売れている商品ほど手を入れていない企業、お客さまの予期せぬ利用方法を吟味する時間を取らない会社は多い。
お客さまと自分たちの「仕合せ」を増やしていくために、先ほどあげた五つの要素をヒントに考えてほしい。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 221」2021.5.21】