挑戦する現場をつくる
2021.09.29岡村 衡一郎
サービス業の生命線、CS 向上のために、いろいろな施策を行なっていると思う。
お客さまに不快な思いをさせないために接客の基本トレーニング、一歩歩み寄ったサービスを提供する応用動作をトレーニングするためのロープレ、声なき声を拾いサービス改善につなげるための顧客アンケート。
やり方をあげれば、CS向上のための多数の方法論が上がってくる。
ホテル業や旅館業ならば、アンケートを置いてないところを探す方が難しいくらいだ。
しかし取り組みの労力をインプットして考え、結果としてアウトプットをサービスの向上においてみた場合、労力と結果のバランスはどうだろう。
アンケートをつくるにも、結果を集計するにも、現場にフィードバックするにも、それなりに時間と労力を使っているはずだ。
秋田県のトヨタカローラは、毎年取られる全国ディーラー CS 調査で、絶えずトップグループに入るサービス優秀店だ。
値引きもしないし、お客さまの自宅に車を取りに行くこともしない。
納車は必ず自宅ではなく店で行なう。
全店としてお客さまをサポートしていくために、全員でおもてなしをするために、お客さまには店に来ていただくことを前提に商売をしている。
一時の、その人の瞬間的な CS 向上ならば、値引きも、自宅に伺うこともできるかもしれないが、続かないこと、ムリしなけれ
ばできないことは選択してはいないのだ。
加えて、営業担当という考え方は極小的にしか持ち合わせていない。
なぜならお客さまがご来社されたとき、担当者が休みであっても、全員が目の前のお客さまに対して担当然として動いていれば CS が下がらないからだ。
「全員でおもてなし」。
これは言葉にすれば簡単だが、なかなかできないことの一つであろう。
トップの号令、現場がそのようにできるものではないし、全員おもてなしマニュアルなどに整理できるものでもないからだ。
秋田カローラにはマニュアルのようなものは最低限のものしかない。
代わりにあるのは、自分たちが考えて決めて実践するサービスのガイドラインだ。
「よりよいお出迎えをするには」、「気持ちの良いお見送りの仕方はないか」、「分かりやすく新車のメリットが伝わらないか」、「も
うすぐクリスマスだけど、何をしようか」、「あのお客さまにこう言われたのだけど、本当はどうすれば良かったのかな」。
店舗スタッフは、サービスを見直すための問いを立て、対話をして、修正していくことを、日々の仕事にする。
県内に約 30 店ある秋田カローラは、一律一斉のサービスは最小限しか展開しない。
店舗メンバーの考える力を引き出す経営をしてきていた結果、会社と店舗の信頼関係があるからである。
よりよきサービスを目指した結果、A 店とB 店で違いがあるのは自然で、互いの学びを誘発する。
違いは良いことで、嗜好を凝らしたサービスが、お客さまの感動につながる。
絶えずサービス向上に向かって試行錯誤する現場には社員の考える力がある。
お出迎えも、お見送りも、店舗の飾りつけも、お客さまにお出しするドリンクも、これで満点という基準を設けずに、いつも見直す習慣がある。
サービスの価値を根本からのすえ直しに週に 1 回・1 時間の時間をかけている成果は止まらない。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 200」2020.11.27】