挑戦する企業文化を支える意思決定のルール
2021.09.27岡村 衡一郎
新しいことにトライしよう。
今までのやり方を変えるアクションの必要性は、以前よりも増している。
コロナの影響もあり、今までのやり方を効率的にしていくだけでは、現状突破が難しいのは確認をするまでもないだろう。
自分たちのサービスは、去年と比べて、何が深化、進化しているだろうか。
挑戦の結果は、企業が変化し続けている状態に表れる。
サービス業なら、去年とは、違うサービスや去年よりも磨かれたサービスが提供され、そこから学んだものを次のサービスに生かしていく循環が回っている状態だ。
挑戦は頭と体が離れる言葉である。
挑戦が少ないと感じるから方針として取り出している会社もあるだろう。
事実、挑戦が日常にある会社、日々の仕事になっている企業は、挑戦しようと声高々に叫ぶことはない。
深化や革新を、一人の天才によるヒラメキに頼るのではなく、日々、当たり前のこととして実践されているからである。
深化や革新を、一人の天才によるヒラメキと考えている方もいるだろう。
確かに優秀とされるデザイナーや、ある種の地平を切り開いたとされる人は、そうだったのかもしれない。
だだ、企業という単位で、実践され続けているところには、多くの人が、挑戦と日々の仕事がつながっていく環境を整えている。
一気に変化を起こす天才とは別の、小さな変化が積みあがって、結果的に大きな飛躍につなげている企業には、水を暖めるとお湯になり、沸点を超えて水蒸気になるような、工夫がある。
具体的には、あらゆる人が考えているのである。
一人一人が手足として動くのではなく頭脳になる、全員が当事者になれる仕掛けである。
一般的に取られている決定事項の展開は、スピード重視のカスケード型だ。
上から下への方向で、決定事項の実践は展開される。
役職上の上位者が決定したものを実行するのが現場の役割だ。
これでは、現場の創意工夫や試行錯誤は生まれにくい。
だからといってすべてを現場に任せていけば、それはそれで、混沌を生んで深化や革新には、つながっていきにくい。
変化が日常にある、いわば、挑戦と声を出さなくともトライが促進されていく企業は、スピードのある展開と混沌から生まれる新しいアイデアの双方を統合している。
物事の決め方が違うのだ。
組織図をフラットにすることではない。
組織での取り組みを重視しながらも、役割を超えた参画を可能にする意思決定のルールにある。
「衆知を集めて責任者が決める」をメインの原則としている。
これを支える形でサブのルールが二つある。
一つは「自分の意見が上司(責任者)に通らないことに納得がいかない場合は、さらに上の上司に相談に言ってもいい」というもの。
二つ目は「決まったことは、自分が 100%納得していなくても必ず実践に移してみてから考える」というものだ。
二つのルールは、決定内容の良化を促進し共に取り組む人たちのエネルギーを高める。
同じ人が考えていけば、同じ結論になるマンネリ防止、現場に近いからつかめるアイデアの断片がぶつかることでの結論の飛躍、決定への参画で実践エネルギーが高まる。
これらに効くから挑戦は日常に生まれていくのだ。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 199」2020.11.20】