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COLUMN

いい会社づくり通信

話し合いが、噛み合う瞬間3

2021.09.24岡村 衡一郎

 前々回、前回を通じ、A社の方針共有、前半部分を紹介してきた。
浸透から共有への転換ポイントは下記の四つ。
浸透は上から下への浸透であり、共有は実践者の中心に位置する方針である。
今回は、方針と日常業務をつないでいくためのⅢ・Ⅳの部分について触れていく。

Ⅰ. 来期方針に対して感じていることを、まず、出し合いましょう。
Ⅱ.そもそも、何のために、来期方針を実践していきますか。
Ⅲ.方針を実践する媒介は、ズバリ! 何にしていきますか。
Ⅳ.数値も大切です。量は数値で測れるとして、質を測るもう一つのモノサシはありませんか。

 A社ではⅠ・Ⅱ・Ⅲの対話のプロセスを通じて近未来に提供したい価値のイメージが、管理職メンバー間で共有された。
同時に列挙された項目を次の二つに仕分けした。
近づけていく項目と来期中の必達の項目である。
新方針には、現在の保有能力だけではたどり着けない未来を描いているのだから、当然と言えば当然だ。

 だが“近づけ型”が含まれるのは、今季初の試みであったように管理職の人たちは感じていた。
池端社長から見ればそうではないのだが、管理職の人がそう思うのは、いたし方ない。
今期までは、目標の達成度合いが問われてきた。
自分が読めない部分にイエスとは言いにくい。
都度デザインしていく必要性がある取り組みであることがなかなかのみ込めなかった。

 今期までの方針は浸透型に近かったのである。
浸透から共有へ。
Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの対話のプロセスを通じて、目指す姿と近未来の提供価値、そして、そこにたどり着くためのシナリオの中心に、商品・サービスのブラッシュアップがセットされた。
ここに描かれているのは、あくまで仮説である。
やってみて分かったことで、展開シナリオは臨機応変に変えていこうということも共有認識になった。

 A社のメンバーは、新方針に向かって走り出していく段階におおよそたどり着けたのだ。
次の段階として展開シナリオを変更していくためのガイドになっていくのが、Ⅳのテーマ、成果のモノサシになる。
企業経営において、量的モノサシはあるが質的モノサシを持っていないことが多くある。
量的とは、売り上げ、粗利、利益などである。
これがなければ、経営できない大切な指標である。
だが、一方、売り上げが上がったら描いた未来に近づけているのかどうかは、十分には分からない。

 A社では、新方針の実現に対するもう一つの成果のモノサシを考えた。
売れたという量的モノサシだけは見えにくいものを見るためにセットした。
それは、お客さまの成功を測るものだ。
具体的には言及できないが、A社の商品・サービスを使用していくことで、どれだけお客さまの仕事がうまく行くようになってきたかを測る視点を二つ持つことにした。

 それはお客さまが、自社の商品・サービスを使用することでどうなるのか、新方針で描いた未来の中心に位置する重要な項目である。
このモノサシも当然、仮説にすぎない。
しかし、見ようとしなければ見ることができない項目であると同時に、もっといいモノサシが見つかれば変更していけばいい。

 A社の新方針は、実践者の意思をもって、来月より本格的に始動する。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 198」2020.11.13】