話し合いが、噛み合う瞬間(1)
2021.09.14岡村 衡一郎
会社の中には、さまざまな話し合いの場がある。
会議、ミーティング、打ち合わせなど。
これらの話し合いの中で相手と話が噛み合い、終わったときに元気になる、よし、やってみよう! と思えるものは、どのくらいの割合であるだろうか。
10 回の話し合いで 7 回エネルギーが上がれば素晴らしい。
10 回話して 3 回あれば、まあまあいい方かもしれない。
多くの会社では、1 回あるかないかではないだろうか。
膝を突き合わせて、または、オンラインでと、形態はいろいろとあるだろう。
互いの時間を合わせ何かをすり合わせたり、決定したりして、推進力を高めるために集まっているのだが、時間をかけたわりには成果につながらないのも、会議、ミーティングの特質ではないだろうか。
先日、A社の方針共有のためのミーティングをサポートさせてもらった。
非常に重要な来期方針をわがこととして実践に移していくために管理職が集まった。
だが、今日初めて聞いた話ではないはずなのに、なかなか、互いの話は噛み合わない。
総論では分かっているのだが、各論に話が下りてくると互いにつっこんだ話ができない。
言いたいことを我慢しているからなのか、表面的な発言の時間が続いていく。
各論こそ、来期の実践で重要なのだが、自分に火の粉がかからないようにしているのか。
「そこ突っ込んで…」と私が思う瞬間に、次の話にすり替えていくような話の展開が繰り返されていた。
自分の仕事との具体的なリンケージになるとトーンダウンしていく参加者に、一番やきもきしていたのは、社長の池端さんだった。
「何回も繰り返して伝えてきたことなのに…」。
各論への落とし込みの弱い管理職に対して、多少の怒りを覚えると同時に自分の伝え方の問題があったのかもれない。
自分自身を内省しながらの話し合いへの参加は、池端さんを疲れさせてしまったようだ。
膠着した時間が続く中、私は、方針の細部を詰めていくことをやめ、次のような論点を持ち込んでみることとした。
1.来期方針に対して感じていることを、まず出し合いましょう
2.そもそも、何のために来期方針を実践していきますか
3.方針を実践する媒介は、ズバリ! 何にしていきますか
4.数値も大切です。量は数値で測れるとして、質を測るもう一つのモノサシはありませんか
方針はトップダウンで展開されていくのが一般的なのかもしれない。
居酒屋での愚痴は別にして、方針自体をどう感じたのかを話し合う場面は少ない。
感じたことを自由に話し合うことは、自分に方針を引き寄せて考えていくことになるのだが、そんな時間を設けることはあまりない。
実際に実践に移していく人たちが、何を感じたのかを表に出さないままに、各論の話に移ってみてもトップの正解を当てにいくことになるだろう。
来期方針の各論への落とし込みは大切。
そして合わせて大切なのが、意思を持った落とし込みだ。
なぜなら、方針には理想も含まれている、現実とのギャップもあるし矛盾もある。
ここを吟味して乗り越えていくためにも、議論の展開、各論への落とし込みを仕切り直して、感じていることを互いに出し合う時間からはじめることにした。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 196」2020.10.23】