応用展開で稼ぐ
2021.08.24岡村 衡一郎
1 カ月前くらいの朝日新聞に「ドライブスルーお化け屋敷」が取り上げられていた。
怖がらせ隊(ホラーの俳優専門の事務所)が主催しているものだ。
内容は、車で倉庫に入り、クラクションを3 回ならすとショーが始まる、20 分間で8000 円のアトラクションだ。
映画撮影の中断やお化け屋敷がクローズの中、三密を回避して誕生したのが「ドライブスルーお化け屋敷」である。
その着想に関して、ずっと気になっていた。
怖がらせ隊のホームページを定期的にチェックしていたら、当初の予定講演は完売となり追加公演を企画しているとの記載があった。
自社集客には、おそらく慣れていない会社だっただろうに、素晴らしい成果を上げたと私は思った。
それに、いま何をすればよいのかを悩んでいる人たちにとって、大きな後押しになる出来事だとも思う。
彼らの中心にある技能はゾンビを上手に演じられることだ。
コア技術の応用展開と一言で説明してしまえば、簡単のように感じるかもしれない。
しかし、なかなか、思いつけるようで思いつけないし、思いついても実際にやってみようというところまで、なかなかいかないものではないだろうか。
技能を抽象化して横展開する。
これは自分たちの新たな事業の切り口を見つけていく上で外せない作法である。
怖がらせ隊は、これをやったのである。
怖がらせ隊と同様に健闘している1社がある。
広島県福山市の岩瀬商店だ。
卸先がどんどん縮小されていく中、その下降線と同様に業績が下がっていく中に自分たちの商売の位置はあった。
彼らは、外部環境は、厳しい状態が続いていると言い訳をする暇もなく、ここ数年、試行錯誤を繰り返してきた。
岩瀬商店は、衣類の染料を長年販売してきた歴史があり、染めることに関しての知見がある。
染料販売の歴史で培ってきた技能を、抽象的に本質を取り出せば二つに集約される。
素材に対する染料選びと染めの技能だ。
岩瀬社長を中心に、技能の横展開の試行錯誤をここ数年続けている。
例えば、試行錯誤の第1 弾は、「なんでも染めます」の一言で、家の壁から海(イベントで採用)、そしてアトラクション施設の古びた感じを出すペイントなど、いただいた依頼はすべて受けてきた。
第2 弾は、自社染め商品の開発販売である。
第3 弾は自社店舗を持ち、染体験を観光の目玉に位置づけた展開。
第4 弾は、通信販売。
そして、第5 弾「アップサイクル」のけん引役として活路を見いだしつつある。
「アップサイクル」とは、売れ残った新品の衣料品を預かって、染め直して販売していくことで、環境負荷ゼロと、買う楽しさ、そして地域で眠っていた技能の再活用につなげる社会課題解決に向けた取り組みである。
すべての試行錯誤は第5 弾に統合された。
自社製品、ダイレクト販売へのトライ。
染める楽しさの分かち合い。
通信販売の要の染めKIT 開発。
こられの取り組みを形にしていく過程で、一から十まですべてを行なえる、頭も腕も手足も整っている会社になっている、ゆえに「アップサイクル」のリーダー役として、より多くの人を巻き込んでいる。
技能を抽象化した横展開ならすべてトライ。
なぜなら、ブドウがワインになる変化を生むプロセスだから。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 193」2020.10.2】