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COLUMN

いい会社づくり通信

きっかけは自分たちでつくる

2021.06.07岡村 衡一郎

 マーケティングの本来的な意味合いは、ターゲッティングなどの表面的なものではなく、自己防衛の手段ではないだろうか。
だとすれば、コントールしにくい手段の選択が一番危ういことになる。
3回にわたり、ある旅館が市内に出向いて自己PRをしている話を取り上げてきた。
彼らが取り組んでいるのは、コントロールできる手段で、客足が戻ってきた際に一番に選ばれる工夫である。

 マスに働きかけて、お客を引くのではない。
お客さまの近くまで行って、自分たちの肉声で、お客さまの必需品の販売をメインに、宿のPRをしている。
自分たちのお客さまは自分たちで。
この当たり前のようにも思える考え方は、多くの所で実践されてはいないのだ。
他社に頼らないマーケティングのやり方は、根本的に発想と行動の転換を伴うのだ。

 下に載せたのは、他社のインフラに頼らない、セルフマーケティングツールとしてのチラシである。
「瀬戸内の海を知り尽くした料理長が作る特製弁当」をキャッチコピーの中心に据えている。
私は、この訴求点は素晴らしいと思っている。
もう少し目立たせた方がいいとは思うのだが、主役はお客さまにとっての必需品「特性あなご弁当」だから、致仕方がないとも言えるだろう。

 チラシには、宿泊とお弁当をつなぐ仕掛けが施されている。
右上の楽天アワード2年連続受賞、最下部には、クーポン券のプレゼントと、弁当と宿の双方の予約を促す仕掛け。
そして料理は間違いなくおいしいだろうというイメージが持てる。
今の時期、テイクアウトの訴求を行なっている飲食店も多い。
しかし料理の背景にある技能を、端的に伝えているお店の方は圧倒的に少ない。
3カ月後の集客までの道筋がチラシ上からは伝わってこない。

 不況期ほど、対策はシンプル、かつ、複数の効果を狙ったものがいい。
菊乃家では、一石二鳥を狙っての取り組みだ。
実際には、チラシでは分からないが、宮島の商店街の一品も複数同時に販売しているから、一石三鳥を狙った取り組みになっている。
それができるのは、本物の和食をつくれる技能だけではなく、菊乃家には、弁当の企画を考えて、手足を動かし、販売までに漕こぎつけるチームがあるからだ。

 はじめてのセルフマーケティングの実践。自己防衛的な手段としての自己 PRができるようになった彼らは、今後のマーケティング展開を大きく変えていくだろう。
きっかけは自分たちでつくる。
この経験が、他社のインフラを使用する際でも、メッセージや、載せていく商品・サービスに、一切妥協しない、自己主張を伴ったページになっていくと、ほぼ確実に予想ができるからだ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 183」2020.7.10】