今・ここを未来につなぐ現場報告A旅館・現場レポート 1/3
2021.05.17岡村 衡一郎
先の4回にわたって、今、この現実に立ち向かう人の声をお伝えさせていただいています。
今回と次回では、観光地にある旅館が、街中に飛び出し、自社商品の販売を開始したレポートです。
支配人から連絡いただいたメールを中心に、状況をご報告させていただきたいと思います。
旅館Aは、島にある旅館として観光客をおもてなしするという存在意義だけでなく、観光地としての島自体を盛り上げられる存在を目指しています。
客単価やアンケートなどの成果指標に商店街を歩く人が増えたかどうかを第三のモノサシに加えて独自の取り組み(各種アクティビティーの提供や独自の観光案内など)を行なっていました。
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支配人からのメールは、そんな、葛藤から始まります。
ある方から、数週間前、「市内の中心部に自社が管理しているオフィスがあるのだけど、よかったら、お弁当のテイクアウトでも使わないか」と、声を掛けてくださいました。
「ここから朝作って持って行くなんて、大変なことをしても利益は上がらないだろうし、時間と労力を掛けてやっても仕方ないだろうな」と一瞬思ったのです。
「イヤ、皆の意見を聞いてみよう」とマネジャーにも声を掛けオフサイトミーティングを実施しました。
人間って、新しいことをしてみたいっていう好奇心があるのですね。
さまざまな意見が出ました。
でも、売り上げを追求され、さらにうまく行かなかったら、責任追及をされるから、誰も何も言わない。
日本人の持つ気質の「タガ」が取れないのです。
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今、島に人が来ない。
ならば、お客さまの近くに出ていこう。
頭では分かっていることを実際の行動に移していくには、思った以上のハードルがあるのかもしれません。
業界特性上のお客さまを受けることを行なってきていますが、受けるのではなく出向くという行為は、初めてなので手探りになるのは、致し方ないことだと思います。
最初の一歩を踏み出そうとした瞬間に、今までの常識が降りかかってきて、行動の足かせになることは少なくありません。
今回の場合は「それってもうかるの」という視点でしょう。
何をやるにもコストがかかりますので、正当性のある視点です。
しかし 既知(すでに分かっていること)を行動に移していくには、費用対効果を厳密に求めていければいいのですが、自分たちにとってやったことがないことは、おおよその計画しか立てられません。
そして、事がうまく運ばなくとも、実践して分かったこととして学び生かして再アクションにつなげていければいいのですが…。
支配人は、次回で紹介させていただく展開で、沸き上がってきたアイデアと行動の間を流れる川に、橋を架けていきます。
メール文中にある「人間って、新しいことをしてみたいっていう好奇心があるのですね」という発見を大切に、行動に移していけるための一手を打つのです。
冒頭に触れた、A旅館が目指す存在意義も、じわり、じわり、メンバーの行動を後押しすることにつながっていきます。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 180」2020.6.19】