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COLUMN

いい会社づくり通信

宮島を盛り上げられる存在へ 旅館・菊乃家の挑戦は続く

2021.01.07岡村 衡一郎

 数回にわたって広島県宮島にある旅館・菊乃家の取り組みを紹介させていただいてきた。
本号も、引き続き、お届けしたいと思う。

 下記の写真は、彼らが作成した「宮島コッチみんさい」というガイドブックの抜粋だ。
取材から紹介の言葉、そして自分たちがやってみての感想など、ことこまかく、十数ページにわたり、つくりこまれている。

 菊乃家が大切にしている成果に、「商店街を歩く人の数を増やす」がある。
この意味するところは、くまなく宮島を回っていただいて、楽しみを一つでも多く見つけられることが、再訪率を増やしていくだろうと考えて、長期的な目標と掲げているからである。

 宮島で、もみじ饅頭をつくる教室があることや、夜に鳥居を回る遊覧船があるのを知っている人はどれくらいいるだろうか。
少なくとも私は宮島に10回以上行っているが、これらの告知を目にした記憶はない。

 島の人にとっては、目新しいものではないかもしれないが、訪れる人には魅力のあるものが多数ある。
菊乃家のスタッフは、全員で手分けをして、すべての教室や、アトラクションに参加して、 自分の言葉で、それらの魅力を伝える取り組みをはじめたのだ。
作成したパンフレットには、すべてのページに自分たちの写真と自分たちの言葉でのコメントを入れている。

 旅館のフロント周りに、観光施設のパンフレットはだいたいのところで置いてある。
しかし、どれだけの施設を自分たちが体験しているか、その本当の楽しさを知っているかと問われたらどうだろうか。

「宮島コッチみんさい」は、お客さまとの会話をはずませる道具として効いている。
十数ページのガイドの中に、お客さまの好みのものは、最低一つは見つかる。
そこから、実体験のあるスタッフだから、その楽しさや見どころを存分に伝えられるし、行ってきた感想から会話もはずんでいくのだ。

 当たり前のことであるかもしれないが、旅館は旅行業に位置する。
だが、どれだけの旅館やホテルが、自分たちの地域を盛り上げていくための取り組みを行なっているだろうか。
菊乃家のスタッフは地域の活性化を本当に意図して、いろいろと試行錯誤を重ねてきた。
そして現在、宮島を盛り上げることと自分たちの活性化につながっている。

 相手のため、お客さまのために、思いついたことは行動に移すという流れは、待ちの商売だと思い込んできた自分たちを絶えず新しくする原動力になっているのだ。
攻めの旅館としての仕事を身に付けたのだ。

オリジナルガイドブック「宮島コッチみんさい」

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 162」2020.1.31】