イノベーティブな企業は仕事の一丁目一番地を伝授する
2020.11.24岡村 衡一郎
サービスイノベーション157では、イノベーティブな風土会社は、問題に振り回されない、と題して、変化創造企業A社の若手社員のトレーニングに用いられるツールについて触れた。
改めて、どのようなものだったのかを変化脳を鍛える企画書(図表1)に表した。
数々のイノベーション、業界常識を打ち破ってきた先達の仕事の進め方を、若手社員に効果的に移管していき変化体質を持続するためのものである。
書かれている視点は、変化創造企業A社の仕事の起点をなす一丁目一番地を規定する、一見簡単なもののように思えるかもしれない。
だが実際に書き出していくと、これらの視点が持つ奥深さに気づくだろう。
例えば、1.背景という欄がある。
この背景は、変化創造企業A社の達人クラスになると、世界の中での自分の仕事の位置づけを意味する。
これから自分がつくる機械の主要パーツは、世界中の同業メーカー、似た機構を持つ異業種メーカーとの比較において、どの位置をねらっているのかが書き出される。
若手社員は、1.の背景の押さえ方の違いに力不足をまず感じるという。
達人クラスは、2.の問題点の列挙は、世界一とのギャップを書き出していくのだ。
現象にある不具合などではない。
オリンピックで言えば、金メダルを取るために解決が必要な問題点を列挙していくのだ。
そして、他社を知り、問題点がある程度見えてきた段階で、設定するのが、世界一になるための主要な目標である。
半分の大きさにして出力を倍にする。
普通に考えれば、大きさを小さくしたら出力は下がる。
出力を上げれば大きさは大きくなる。
このような二律背反するものを突破する、という項目の、本当に、実現できれば世界一になるというものを、目標に持ってくるのだ。
目標設定に、できるから、とかできないとかという思考は、ほとんど加味されない。
学校を卒業したての若手社員にとって、今まであまり見たことがない目標設定の仕方は、今後の何を目標にすべきなのかのガイドとして、強烈に印象付けられる。
これらの6項目にまとめられたものは、シンプルだが非常に奥が深い、シンプルだからこそ浅いレベルで一通り書くこともできる。
ここが一つのミソである。
ベテラン社員は、若手社員の思考レベルを、紙を見れば瞬時に理解することができるのだ。
よって、若手社員に対するアドバイスも的確でずれなくなる。
若手社員に何を教えていくべきか。
悩んでいる企業にとっても変化創造企業A社の仕事の見方、在り方、やり方を伝授できるコンパクトなツールが参考にならないだろうか。
本質は、いつも、シンプルに表現でき、かつ、奥が深いものだから。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 158」2019.12.13】