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COLUMN

いい会社づくり通信

自分で自分の機嫌を取る

2020.03.23岡村 衡一郎

 変化の先頭に立つリーダーは、いつでも明るさを保っている。
明るさを、多くの人を巻き込んでいく上で必要な仕事の道具と認識しているからだ。
誰でも不機嫌になることはある。
しかし、ネアカの重要性を知っていて、ここへの対処を意図して行なっているから最小時間に、機嫌の悪い時間をとどめられるようにしている。

 明るいリーダーの多くは、元々が明るい性格だとか、元気が取り柄だとか、本人の気質によるものではなさそうだ。
数々の企業を立て直してきた山中さんもその一人。
自分の機嫌をコントールする技を、企業変革をリードしていく中で、身に付けてきた、と言う。
最初のうちは、みんなの前で大きな声で怒ることも、特定の人に詰め寄るような後味の悪い場面も多々あった。
山中さんは、家に帰ってからも、怒ったことや詰め寄ったことでの後味の悪さで眠りにつくのが、遅くなった日々も長く続いたそうだ。

「このままでは自分の体がもたない」と感じるくらいに疲れたときに、「自分の機嫌は自分で取っていこう」と思い直した。
なぜなら、「誰もトップである自分の機嫌は取ってはくれない。社員のときは上司もいたし、同僚も気にかけてくれていた。
この延長にいる自分がいけなかった、自分の体、社員のためにも、機嫌対策を立てよう」と決めた。

 手始めに、今日できたことの振り返りから着手した。
行動を振り返って、ベストパフォーマンスを書き出していった。
腹立たしいことも書き出していった。
文字にすることで、うまくいったことも、そうでないことも、客観的に見られるようになったのが大きい。
うまくいったことは半分のスピードで、うまくいかなかったことは、事前に対策を打つことで。
自分の機嫌と、第三者的視点をもって、メンテナンスしていった。

 自分の仕事に対するうれしさは、昨日とは違う仕事の仕方、創意工夫が発見できた時。
逆に、イライラは、何回言っても直らない繰り返し作業に見えてしまったときである。
業務だけでない気持ちの振り返りを行なっていく中で、自分が社員にリクエストすべき、仕事の一丁目一番地「今日は昨日と何を変えましたか」が見えてきた。

 自分とメンバーの間に置くべき、仕事の仕方の良しあしをはかるモノサシが分かってから、社内のいたるところに、メッセージを張り出した。
自分が大切にしていることはこれです。
これだけは、意識して仕事をしてください。
そうすると、皆さんも成長できるし、会社ももうかる。
そして、何より、私の仕事を見る目が鍛えられる。

 山中さんは、メンバーと自分の間にあるモノサシを明らかにしていくという行為と、日々の業務だけでなく気持ちも振り返る時間を持ち、自分の機嫌を保てるようになった。
聖人君子だから、できたものではない。

 リーダーになったら、自分の機嫌を取ってくれない。
この当たり前の事実に気づかずに、部下の前で文句を言ってしまっている人も少なくはないだろう。
言いたくなる気持ちも、必要以上にメンバーに厳しくしてしまいたくなる気持ちも分かる。
しかし、明るさは仕事を前に進めていくための道具であるのだ。
自分の機嫌を自分で取るための仕掛けをつくっていこう。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 125」2019.3.15】