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COLUMN

いい会社づくり通信

~パークホテル東京の快進撃1/5 「たった一部屋からの偉業」

2019.12.10岡村 衡一郎

「こんなに人が集まるなんて、アーティストルームの力は本当にすごい!」

 パークホテル東京の宿泊グループ支配人の小野淳志さんは、とてもうれしそうです。
宿泊客以外のたくさんのお客さまが「ホテルアートフェス」に足を運んでくれたからです。
2016年に行なわれた第1回の来場者は約900人、参加費は2000円で、アートを取り入れたカフェメニューをラウンジで楽しむ人、ロビーで行なわれた日本の現代アート作品展示を楽しむ人、ホテル内は多くの人たちでにぎわいました。

 どうして、パークホテル東京にこれだけ集まったのでしょうか。
それは、「ホテルアートフェス」の目玉であった31階にあるアーティストフロア(31室ある全客室がアーティストルームを美術館のように楽しめる機会)を、たくさんの人たちが心待ちにしていたからです。

 今では、アーティストルーム以外も含めたホテル内のさまざまな場面で、お客さまがアートに触れられることが、パークホテル東京の価値となっています。
アーティストルームを中心に据えつつ、宿泊以外のお客さまもひきつけるイベントなども作り上げ、ホテル全体を「日本の美意識を体感できる時空間」に仕立てています。

 パークホテル東京の価値向上をリードしたのは、相撲をモチーフとしたアーティストルーム「相撲」です。
たった一部屋のアーティストルームは、パークホテル東京のブランディングをやり直す突破口を開きました。
お客さまからの好反応を後押しに、「和紙の部屋」「桜」「芸者金魚」などと、個性ある部屋を一つ一つ作り込んでいくことができました。
どれも手の込んだ作品で制作期間に1年を要した作品もあります。

 日本の美の中に宿泊する体験は、パークホテル東京の武器に。
結果、5年間で売り上げが1.4倍、客単価も1.5倍になり ました。コンセプトは、お客さまをひきつけただけでなく、働く人たちに誇りももたらしました。
「日本の美意識が体感できる時空間」を作る実践が、仕事そのものの質を変えていったのです。

 ホテルスタッフと、協力者(アーティストや外部スタッフなど)が、 部屋だけでなく、接客サービス、レストラン、ラウンジ、イベントなどの細部にわたって、「日本の美意識を体感できる時空間作り」にかかわっています。
多くの人の知恵が重なった時空間は、「アー トと言えばパークホテル東京」と、国内外に広く知れわたるようになりました。

「日本の美意識を体感できる時空間」を目指す取り組みは、 最初からアーティストルームありきで始まったものではありません。
それは、08 年のリーマンショックに11 年の東日本大震災の影響が重なり、外国人客が大幅に減り、客室の稼働率が下がった状況を克服するための試行錯誤(いわば現状突破プロジェクト)の中で探し出した渾身のコンセプトから生まれたものだったのです。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 112」2018.11.23】