右腕候補は1人ではなく10人にする
2019.12.02
先日、私が知っている中で、人の成長速度が最も早いと感じる会社のY社長の話を聞かせてもらった。
印象的な言葉で、ほかの人と視点が違うと思ったのは「自分の右腕候補を絶えず 10人つくり、期待して、あてにして、ほめる」であった。
組織を飛躍させていく上で、次を担うキーマンづくりは欠かせない。
人を決めて、自分に持っているものを伝承していく。
真剣にかかわっていく中で、自分の分身をつくる。
これらは有能な上司の命題と言えるだろう。
しかし真剣は深刻なものになってしまっては効果が出にくい。
まずあの人を、と、ついつい1人に固定して、深刻な面持ちになっていないだろうか。
1人に決めた方がうまくいくようにも思える。
しかし、その人がそうなるのか、ならないのかは、相手の自由だし、そうなるとは限らない。
Y社長の右腕候補は10人。
なるほど、増やすにこしたことはない。
一緒に話を聞いていたN氏は、右腕候補を1人に決めていた。
N氏は、1人に決めているから、あたりが強くなって、ついつい厳しくなって、うまくいかないことが多いと、自身のアプ ローチを反省していた。
厳しくして、期待が大きい分、多少のことではほめられなくなってしまっているようだ。
Y社長のアプローチは。10人の競争意識や切磋琢磨できる環境づくりにも効いている。
キーマンが集まる会議では、ここにいる全員が次の社長候補だ、と伝えている。
そして、一人一人に対しての期待や強みを言葉にして伝える。
そして、自分の分身候補を複数持つようにリクエストしている。
キーマンにとってY社長が、部下にかかわっていく際のモデルになっている。
Y社長が期待をかけ、ほめてくれるように、自分の部下にも期待をかけ、ほめていく。
そして、この部分では、 自分を抜いていくように支援をする。
成長を支える支援関係が 徐々にでき上がっているのだ。
右腕をつくる。
この命題への取り組みを、N氏は狭い範囲で実践していたと振り返っていたが、熱心に取り組んでいる人は、多かれ少なかれ、同じようなアプローチになっているだろう。
固定化は一見早いように思えても、遠回りになってしまうのだろう。
あてにされていないと感じれば、周りの人は手を抜いていってしまうだろうし、あてにしている人にとって既得権益的にもなっていってしまう可能性があるからだ。
考えてみれば、よい会社ほど、組織は流動的な側面がある。
キーマンが絶えず出現して入れ替わっていくのだ。
大リーグのように。
絶えず前を向いた入れ替え戦がなされている。
しかも、キーマンが増えた分だけ部署が増えていくから、一度、役職が下がっても、頑張っていれば、また上がるチャンスは訪れる。
誰も降格だとか、外されたとかで、大げさに騒がないのだ。
次を担える人を増やすアプローチが、1人が10人。
10人が10人というように広がっている。
Y社長のもとでの人材育成は末広がりだ。
だから、成長の速度がとても早いのだ。
教えることで成長する。
相手の成長を喜べる。
伺うたびに、活躍している人が増えている。
部下のやったことをうれしそうにしゃべる人が増えているのは、1人10人という、右腕づくりのアプローチにある。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 111」2018.11.16】