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COLUMN

いい会社づくり通信

コペルニクス的転換でのルール・マニュアル活用術

2019.05.20岡村 衡一郎

 どの企業にもルール・マニュアルなどの仕事のガイドとなるようなものがあるだろう。1
0 社中 8 社にとって、それらの規則や手順は平均点を取りに行くための道具、または、クレーム回避のためのツールにとどまっている。
「ハンバーガー 20 個、お召し上がりですか」の話はあまりに有名であるが、自社もそうかも、サービスが画一化、無情化していないだろうか、と考える人は少ないだろう。

 サービス業 A 社の B 支店にとってのルール・マニュアルは他社と表紙が一緒でも活用の仕方は全くことなる。
標準や画一を目的にしたものではなく、最高のサービスを実践していくための道具として使い込まれているのだ。
例えば、お客さま対応でもっといい作業の手順やモノの置き方・レイアウトが分かれば、その日のうちにマニュアルを書き換える。
最高が分かったら更新をルールにしているのだ。

 更新する際に躊躇なく即実践に移せるように、表面的な美しさではなく機能美を追求することを大切にしている。
多少見た目が悪くなっても、お客さまにとってサービスがより早く、より美しく展開できるのであれば、表面よりも実を取って展開を止めないのだ。
というのは、本部が決めたブランドコードやカラーコントロールの見た目の美しさより、実体が先にあるのだが、ついついガイドラインを守るのが大切だと勘違いしてしまいやすいと考えているからだ。

 支店から見れば本部とは組織図上は上にいる。
しかし、上から降りてくるルールは、過去の最大公約数的な指示になりやすい。
事件は会議室で起こっているのではない。
現場で起こっている…
つまり、上とのやり取りに苦労することは、どの企業でも多かれ少なかれあるだろう。
更新しにくい道具は、A 社にも数多く今もある。
だが B 支店のメンバーは、本部が作成したマニュアルの肝を含んだ上で、さらに自分たちで日々、更新していく。

 彼らのマニュアルは、今日が最高のマニュアルなのだ。
本部が守らせたいことをやりながらも、さらに自分たちの色を加える。
事件をこう解決しました、会議室の方々、全社展開への参考にしてください、と言わんばかりの自信に満ち溢れている。
自信の根拠は、自分たちが考え更新し続けるマニュアルで、全国トップの成績をここ一年出し続けているからである。

 A 社 B 支店のメンバーは、ルール・マニュアルを守るものから、最高の状態を更新してつくり続けるための道具にした。
地動説から天動説に変わるくらいと言ったらおおげさかもしれないが、根本的に活用の仕方を変えたのだ。
マニュアル編集された見た目の美しいものではなく、機能美をもって動くマニュアルなのだ。
B 支店壁面には、一目で今日時点の最高が定義され、1カ月前のものとは内容は変わっている。

 サービスの「画一化」、「無情化」の反対は、仕事への愛着となるだろう。
B 支店のメンバーは、ハンバーガー 20 個と言われれば、今日はどんなパーティーですか、お届けしましょうかと答えるだろう。
この反応はできるようでなかなかできない。
「今日の最高」を、常々考えていなければ自然には出てこない転換能力だからだ。
ルール・マニュアルは、A 社 B 支店にとって愛の結晶だ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 086」2018.4.27】