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COLUMN

いい会社づくり通信

「コーチとのラリー」をウリに生涯テニスを応援する思いを訴求

2019.02.13岡村 衡一郎

 価格面に焦点をあてた販売促進の繰り返しは、「仕事の質を見直す」取り組みをなおざりにしてしまいがちだ。
フィットネスクラブなどの入会金 0 円は、キャンペーンというより常時 0 円と感じるくらい頻繁に行なわれている。
いったい何のために入会金がいるのか分からないくらいの感覚を持つ消費者も多いのではないだろうか。

 会員ビジネスにおいて、新規入会者を増やすのが生命線になるのは言うまでもない。
フィットネスクラブでも、テニススクールでも、お客さまは何らかの目標を持って参加してくるが、多くの企業が、そこを正面からとらえ、訴えかけずに価格訴求で終わっている。
月会費無料キャンペーンを頻繁に打つ英会話スクールもあるが、英語を何にどう使いたいかに応えるかをもっと伝えた方がいいように思う。

 西武テニススクールも同様に「春のキャンペーン」「夏のキャンペーン」「秋のキャンペーン」と、枕詞をかえて、価格で訴える販促を長年行なってきた。
自分たちの価値を打ち出し、他社との差異化ポイントに仕上げていく。
この最も重要なアクションが十分に取られないままに、伝える内容がいいかげんになっていたと言える。

 自分たちの独自性を打ち出したい。
彼らと共に「お客さまは何を買っているのか」、「退会してしまった人の真の理由」を掘り下げていった。
対話を繰り返していく中で、手帳にレッスン日にハートのマークをつけているお客さまがいることを知った。
退会の理由はレッスンの内容ではなく、ひざやひじの不調であることが認識できた。

 手帳にハートのマークをつける。この意味は分かりにくいかもしれないが、お客さまにとっての特別な日であることを表している。
特別に応えていくための自分たちのサービスは何か。レッスンの中で最も楽しさを届けられるのは何なのか。
この問いからあぶりだしたのが「コーチとのラリー」である。
生きた球によるレッスン時間を今までの倍にした。

 小さなケガを防止するために何ができるか。
レッスン前後のストレッチ、負担がかかりそうな打ち方をしている人へのアドバイスなど、お客さまが生涯テニスを続けていくためのアプローチも研究を重ねていった。

「楽しい上達」と「生涯テニス」という、これから大切にしていく二つのキーワードを商品で具体的にしていくための二つの改良ポイントは、自分たちがやるべきことを明らかにしていく。
体験というファーストコンタクトで、いかに体験し、実感し続けていただくか。
専門コースを受講するファンの方に感動レベルで提供していくには何が足りないのか。改良ポイントが山ほど見えてきた。

 質的な競争を制する。ライフサイクル安定期にあるテニススクール業界は、一地域一社が生き残るマーケットである。
西武テニススクールのコーチたちは、一時的な安さで訴求するのではなく、提供する価値を掘り下げ、入会を呼びかける短い時間でも、お客さまに体験してもらえる工夫を止めない。
「コーチとのラリーが自慢のテニススクールです」、「生涯テニス人生を支えます」。
この二つのメッセージを核に入会者を増やしている。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 073」2018.1.19】