絶対目標を優先させれば活力は取り戻せる
2019.01.29岡村 衡一郎
皆さんの自宅や勤め先の近くの銀行は、気軽に相談しやすい雰囲気でしょうか。
普段、皆さんが訪れる銀行のカウンター越しには行員たちが見えると思うが、処理業務をしながら座っているため、来店客への目配せはほとんどない。
誰もが一所懸命なのに、お客さまが温かい印象をいだきにくいサービス業の代表が銀行とも言える。
1 円たりともミスなく、多くの仕事を捌ばき、自分の持ち場をしっかり遂行するという仕事の力点が、緊張感のある雰囲気を醸し出す。
住宅ローンや個人資産の運用に特化したところであれば、そうではないかもしれないが、おおむね、硬い、居心地が悪い、冷たいといった雰囲気だ。
そうしたイメージとは一線を画す銀行が、秋田県にある。
ローンの相談に特化していなくとも、お客さまの相談にしっかり応じて評価を高めている。
居心地が悪い銀行から相談できる銀行へのサービス力アップの取り組みを最初にけん引し、全店のモデルになったのが秋田県の北都銀行の秋田西支店、秋田東支店、牛島支店だ。
「気軽に相談できる」と言葉で表すと簡単だが実際にやるのは難しい。
通常の業務である振り込みや決済をスピーディーに処理する。
同時にお客さまの相談にしっかり応える。
これら二つの仕事を併せ持つのは、そばで見ているよりも難しい。
金銭の相談をしたい人にはじっくりと話を聞いて対応したい。
しかしカウンターでの話が長引けば、振り込みなどを早く処理して帰りたいほかのお客さまを待たせることになりかねない。
三支店は、仕事の成果を「本日は何人の相談に対応できたか」とし、チームで仕事の仕方を見直すことからはじめた。
「自分の持ち場を守る」から「相談の量と質を上げる」に重点を置き直し、仕事をみんなで振り返り日々修正をしていった。
そのときそのときのお客さまの状況に応じて持ち場をスイッチする。
相談に接している人のボジションにほかのメンバーが入る。
これらの柔軟さのあるオペレーションができる力を身につけていったのだ。
「相談」を最も重要な目標に据えた三支店は、店全体が「相談できる銀行」という、なりたい姿に近づくチームオペレーションができている。
結果として過去最高の収益を実現する店舗も複数出てきた。
チームでお客さまを迎えているという雰囲気は、お客さまを呼び、相談しやすい間をもたらしている。
そして、銀行の本来業務である金銭の問題や課題解決は、人の活力を引き出している。
秋田西支店、秋田東支店、牛島支店の行員はお客さまから名前で呼ばれることも多い。
実際にお客さまに役立っているから覚えてもらえる。
貢献できているという実感は、さらなるお役立ちを考えるエネルギーを喚起する。
彼らは地域の人と人をつなぐインフラとして活用するアイデアを出して取り組む。
例えば、店舗のスペースを使った展示会、銀行でのクリスマスコンサートなどだ。
会社には売り上げ目標やシェア、残業時間ゼロなどの複数目標がある。
その中で最も優先させる目標を定めることが、芋づる式に多くの目標達成につながっていくのだ。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 071」2017.12.22】