03-5420-6251

ご相談窓口/9:30〜18:00

COLUMN

いい会社づくり通信

味方と考え方次第で足元にあるものは財産になる

2019.01.21岡村 衡一郎

「うちに頼んでもらえれば、最短で屋根をかけるサポートができます」。
お客さまの本当の問題を解決できるサービスで好評の物林㈱北海道事業所。
同社には「2DAYあんちゃん」という商品がある。
建築材料のプレカット(住宅の柱などの木組み)を、納品と同時に大工さんが 2日間で屋根かけまでを行なう、材料と施工がセットになった商品だ。
屋根をかけることで、悪天候による工期遅れを防げるのが最大の特徴である。
この商品ができて以来、商談でほぼ負け知らず。
人材が潤沢ではない中堅ビルダーにとっては、スムーズな工期が需要だからだ。

 材料だけを買うならば安い方がいい。
「2DAYあんちゃん」をリリースする前には、ライバルが持つ新型の生産設備との差を埋められず、価格でライバルに奪われる商談が続いていた。
「大工さんが商品と一緒に赴く」といった思わぬ着想は、営業活動を一切やめて取り組んだ現場観察と、異能を持ったハウスメーカー出身の阿部さんのアイデアから生まれたものだ。
全員が現場のお客さまの真の困りごとをていねいに拾い集め、同時に本当にどうしたいのかを聞いて回った。
見えてきたのは、営業活動に専念したい、大手はハウスメーカーと戦っていくための武器が欲しいという欲求だった。

 工期の遅れはコスト増につながるし、次の営業活動に支障をきたす。
まず必要なのは、注文済の住宅に余分なエネルギーを使わなくてもいい商品の開発だ。
「うちから買っていただければ、工期の遅れは防げます」と言い切れる具体策だ。
とはいえ、焦点は定まったもののアイデアが簡単には出てこない。
ここに突破口となったのが阿部さんのアイデアだ。
「雨が降ればその分工期は遅れる。最短で屋根がかけられれば工期の遅れは防げる」
こうして、問題解決の糸口が見えてきた。

 彼らの足元には、大工さんとのネットワークがある。
工務店のビジネスの成功を支援するという目的を強く持てたからこそネットワークが財産に変わる。
材料販売に焦点があった段階では、強みとしては意識されていなかった、他社とのつながりが価値を生み出す基盤として改めて見えてきたのだ。
工務店が最も嫌がる工機の遅れをゼロにする、大目的のもとに大工さんとのつながりが、新価値の提供に深まっている。

 お客さまの問題解決に役立てる自信をメンバーにもたらした彼らの課題はもはや、地場のハウスメーカーに勝てる武器づくり。
北海道の木で家を建てよう、と地元のエンドユーザーを山林に招いて環境改善に働きかけるなどの取り組みから、地場工務店の工期短縮から見込み客の発掘の支援まで、物販から一歩進んだ新たな価値をつくることができた自信が、こうした新価値の創造に向かわせている。

 物林が目指すビジョン「機能を持った商社になる」を「2DAYあんちゃん」は形にし、大工さんとのネットワークを再び財案に変えた。
そして今「大手ハウスメーカーと互角に戦っていける地元工務店をつくる」と、飲み会でビール片手に話していた大きな夢が、地元の山から加工までの商流、先達が積み上げてきた財
産のもと花開きつつある。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 070」2017.12.15】