変化を支えるA面とB面のハイブリッド戦略
2018.11.26岡村 衡一郎
パークホテル東京は世の中へ貢献のし方も働き方も4 年前とは全く別のホテルになった。
1 年間の取材回数は 150 回を超え、独自企画のイベントに宿泊以外のお客さまを 2000 人集められるだけの力をつけた。ジャパン・ツーリズム・アワードでの表彰は、旅行の在り方に好影響を与える存在になった証しだろう。
外的な評価もさることながら、社員の定着率は業界平均の倍、やっている本人たちも仕事を楽しんでいる。
彼らの変化を生み出し続ける原動力の根っこに A 面とB 面の戦略の二面性がある。
A 面ではほかのホテルがやっていることは同等またはそれ以上に取り組む。B 面で自分たちにしかできない取り組みに知恵を出す。
自分たちがやり方まで分かっていたなら他社の誰かも分かっているゆえに勝てない。
勝つための実践は、なりたい姿が先の楽しみがともなう試行錯誤型である。
常識では行き先と行き方はワンセットだ。
多くの企業では、感覚的なテーマはロジックの甘さから見捨てられる。
このポイントはお客さまにとっても価値がありそうだ。
ここにトライ&エラーで着手することが実は戦略的なのだ。
「日本の美意識が体感できる時空間になる」。
彼らは、ホテルという枠を超えたところになりたい姿を設定した。
部屋の広さと立地、内外装のグレードの競争だけでなく、自分たちが勝てる戦いの場をお客さまが何かを発見できる喜びにすると先に決めた。
ジャパン・ツーリズム・アワードでの①日本の魅力を増加させている。
②旅行者にとってユニークな体験の場になっている。
③アーティストの作品によって客室を演出するほかには見慣れない先進的な取り組みである。
行き先を先に決めた試行錯誤は、これらの評価を得られるまでに熟成している。
今やメジャーになったアーティストルームは、メンテナンス上容易な同一装備品という考えとはかけ離れている。
彼らが仕掛ける全員参加で仕掛けるイベントは、分業が当たり前の業界常識とは一線を画す。
業界の当たり前を切り崩せてきたのは、彼らの努力はもちろん、トップの後押しがあったからだ。
「万が一ダメだったら元に戻せばいいじゃないか、やってみよう」。
社長は彼らの具体策の詳細よりも変化を持続させる熱に重きを置いてミドルリーダーに時間を与え、権限を委譲していった。
ミドルリーダーにとって、変革コンセプトを見つけるまでの時間を十分に業務時間内に確保してくれたこと。
自分たちが決めたことであるならば、基本的に GO である言い切ってくれたこと。
責任と権限を現場に与えてくれたこと。
これらの後押しは、変化を踏み出すための支えになったとよく話してくれる。
ビジョンが方向をつくる。
変わるには努力の大切だ。
これらの常識はやった上で常識を超える取り組みが彼らの持続的変化を支えている。
超常識レベルなければ、勝てないし、
やっている人たちにとっても面白味に欠ける。
A 面とB 面のハイブリッド型の取り組みは、業界へのインパクトももたらした。
そして、働き方を変えた。
お客さまの感動をつくる仕事ができるから、社員はパークホテルを選択し働き続ける。
自分たちのホテルだから、主体的に手を入れ続け、同じところにとどまることはないのだ。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 063」2017.10.27】