皆がうまく成り立つように(三方良し)
2018.11.21岡村 衡一郎
起こした活動が持続発展的に進むのか、一時的な好転で終わってしまうのか。
ここを分けるのが、小野支配人がまとめた三つのポイントの締めくくりである。
前回、前々回をまだ読んでいない方は、ぜひ、一つ目のポイントである「こっちへ行こう」を決める。
二つ目のポイントである「まずやってみる」を確認いただきたい。
向かう方向やそれを実践することが、かかわる人の幸せにつながってはじめて広がりを見せていくというもの。
パークホテル東京が変化し続けている最大の要因はここにある。
小野さんの語りには出てこないが、全体最適の上を行く全員最適という視点は母親から学んだものだ。
家族の、近所の人たちの、それぞれが喜ぶ仕掛けを横で見てきた小野さんにとって、みんながうまくいくというのは生きる上でのテーマである。
ホテルを宿泊する場所と捉えず空間と広く定義したからこそ、かかわる人たちの幸せを生み出せる媒介となれる。
足元にある強みは、思った以上に見つけにくいものだ。
日本の美意識を体感できる時空間を目指す。
思いついたことを何でもお金をかけずに実践に移す。
これらが習慣になった彼らは、強みを違う角度から見つけ花開かせ続けられるようになったのだ。
では小野さんに、持続発展のポイントについて語っていただこう。
皆がうまく成り立つように(三方良し)
皆がうまく成り立つように考えることは、相乗効果を生み出します。
それぞれが「売り」を発揮し、最大限の魅力を作るのです。
ホテルが持っている上質な場所(アトリウム、ロビー、客室)で、プロ(アーティスト、ギャラリー、映像クリエイター、ミュージシャンなど)が本物を表現する。
私たちの「一品」であるアーティストルームは、アーティスト、ホテルの気持ちがバランスよく一致しなければ成り立ちません。
■アーティスト・・・名前が広まる、作品が残り、海外とつながる
■ギャラリー(画廊)・・・アーティストの名前が広まる、作品が売れる
※普段ギャラリーに来ない客層にアプローチできる。
■ホテル・・・本物による空気・空間を作ることができる。イメージ、ブランド
信用=ブランド、アーティストルーム・・・もうかる
■ゲスト・・・日本らしい(日本にしかない)経験ができる。
魅力ある商品を作りたいホテル側と、作品を残したい、海外ゲストに見てもらいたいアーティスト側がまさに実を結んだ「作品」です。
アーティストルームが完成した後は、ホテル側が継続して広報活動を行ない、アーティストの名前も広めていきます。
こうして永遠にホテルとの関係が続いていくのです。
私たちはそのようなアートで知り合った方々と「コミュニティ」を作り上げ、他社にないホテル活動の新たな力として大切にしていきたいと考えています。
以上が三つ目のポイントである。
皆がうまく成り立つようにするための取り組み事例だ。
自分たちの取り組みを中心に、いや媒介にかかわる人の働く喜び、買う喜びの追求できるか否かがイノベーションの原動力を左右する。
変化は知恵から生まれ、誰かの喜びになって発展していく。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 062」2017.10.20】