「こっちへ行こう」を決める
2018.11.06岡村 衡一郎
ジャパン・ツーリズム・アワードを受賞した、
パークホテルの快進撃をご存じの方も多いだろう。
次会から続く3 回では、パークホテル東京の小野支配人にも語っていただきながら、ホテルらしく、新しくもうかるようにする実践ポイントに触れていく。
パークホテルの変化を支えた原則は三つある。
(1)「こっちへ行こう」を決める、
(2)まずやってみる、
(3)みんながうまく成り立つようにと考える。
この三つのうち、どれか一つが欠けても変化の船出は座礁する。
いい変化や成功事例の背景の多くは共通している。
行き先をみんなの幸せを考えながら決める。
思考だけに偏らず、まずはやってみる。
やって分かった体感が行先をよりクリアにしていくように三原則は補完関係にある。
行き先が見える人はみんなを忘れがちだ。
まずやってみるが習慣の人は行き先の熟考がなされない。
みんなの幸せを考える人は「こっちだ」と押し切れない。
あぶりだした変化のパークホテルの変革は、決して特殊の事例ではない。
では小野さんに一つ目のポイントについて語っていただこう。
ポイント⑴ 「こっちへ行こう」を決める
活動を始めたのは 2012 年 1月。
当時、2008 年リーマンショック、2011 年東日本大震災を経て業界が低迷し価格競争に突入。
ホテルごとの個性はなくなり部屋の大きさで客室料金が決まっていました。
私たちも価格競争に巻き込まれていました。
現状を突破し独自の魅力を持ったホテルを作っていかなければならない。
ミドルマネージャーを中心にチームを結成したのです。
まずチームで徹底的に「こっちへ行こう」という方向性を話し合いました。
そんな簡単にでてきません。
ホテルに泊まり込み 50時間以上を費やしました。
今の自分たちをしっかりと認識するため、現状分析を本音で行ないました。
2003 年「東京初のデザインホテル」を掲げて、10 年たち「何となくデザインホテル」になっている。
やや残念ですが現実はそんな感じでした。
先輩の築いたブランドに自分たちが手を加えていなければ当然だった。
努力していなかった訳ではありません。
「こっちへ行こう」がなかったのです。
開業後は、デザインや建築に興味のある方や、海外からの方に多く利用していただいており、そんな状況に乗っかっていたのかもしれません。
自分たちの強みを生かし、未来ある新しいコンセプトは何か。
もともとパークホテル東京は海外に強いホテルでしたので、海外に向けて日本の良さを伝えて喜んでもらった経験もあります。
そうだ日本の素晴らしさを伝えよう。
『日本の美意識が体感できる時空間』。
新たな行き先は、皆の中、覚悟と少しのワクワクをもたらしました。
以上一つ目のポイント「こっちへ行こう」を決めるである。
抽象的なようで具体的イメージがわく。
加えてお客さまの喜びをつくってきた瞬間を熟成させれば近づけるという自分たちならではの行き先を見つけた。
『日本の美意識が体感できる時空間』は、試行錯誤を促しかかわる人の最大公約数の幸せにつなげる媒介となっていく。
次回以降で語っていただく。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 060」2017.10.6】