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COLUMN

いい会社づくり通信

懐の深さが価格幅にでる

2018.07.24岡村 衡一郎

 取扱商品の価格幅は今どれくらいだろうか。
お客さまの購入単位商品(単品)の最下限価格と上限価格の幅は繁盛しているお店ほど広い。
例えばお茶の専門店、下限が 500 円、上限が 4000 円と約 8 倍。
カメラの一番企業の写真プリントは 10 円から1 万円まで 1000 倍の品ぞろえがある。
幅の広さは、お客さまのニーズに応える努力とつくる取り組みを繰り返していった結果である。

 マーケティングの教科書には、お客さまを絞れと指南しているものもある。
客層を絞って商売ができるのは人口の多いエリア、または、起業間もないころに市場に食い込む手法である。
繁盛企業は業種業界に関係なく多くの客層に支持を得る。
老若男女すべてのお客さまに思いをはせ、商品の品添えでお客さまに応えていこうとするし、新たな欲求を喚起し続けるからだ。

 お茶の専門店で言えば、主に学生用の抹茶をはじめたばかりの入門客用に 500 円から800 円を用意する。
先生へのおみやげや特別なお茶会用に 3000 円、4000 円の高グレード。
抹茶を生活の一部に取り入れている人には中グレードの 1000 円から2000 円商品を準備。
そして、抹茶をはじめるための入門セットは、茶碗、抹茶など込み込みでズバリ! 5000 円の目玉商品を準備している。

 カメラ専門店では、携帯写真を気軽にプリントアウトできるように 10 円ミニサイズ、通常サイズ 20 円を下限に、決めの写真は高画質。
おじいちゃん、おばあちゃんへの手土産用にお孫さんの写真を大きく高画質で額に入れて 1 万円。
中間には 15 枚を一枚にレイアウトした大判フォトや、アルバムの写真代行サービスなど、あらゆる写真と生活の提案を行なっている。

 イメージ重視の自称専門店や高級店は品ぞろえに偏りがある。
自分の好みがお客さまのニーズよりも先にある結果、ある特定のグレードに思い入れが強くなっている。
繁盛店はお客に近づく。
老舗のお茶屋さんの外観は高級店イメージを持ちつつ、あらゆる抹茶のニーズに応え、つくりだす実践の結果が、百貨店で取り扱う商品の下の価格から上まですべてを取りそろえる。

 お客さまを増やし続けるカメラ店は、マニアの心をゆさぶる努力をしつつも、マニアだけを想定しない。
お客さまと写真のあらゆる関係を想定して受け入れていこうとするから、プロ、セミプロ、素人、すべての人がわくわくできる商品ができあがっていく。
お客さまの購入単位、写真プリントする行為を支える商品に下限と上限で 1000 倍の幅があるのが、その証しである。
自社の主力商品の下限と上限に、どれくらいの幅があるだろうか。
2 倍以下なら自分たちの嗜好性がお客さまの欲求よりも勝っている可能性がある。
3 倍あれば、入門客、中門客、出門客向けのニーズに応えるべく努力してきた結果と言える。
しかし繁盛するのは、お客さまの常識を超え、あらゆる客層をひきつけ、ニーズを喚起し続ける品ぞろえや超常識の実践の結果だ。

 あらゆるお客さまを受け入れる懐の深さが品ぞろえに出る。
お客さまの既知となっている使い方を自社の主力商品は十分に受けきれているだろうか。
お客さまがまだ知らない商品と生活や仕事の関係をつくりだす提案を商品で行なうには何がいるだろうか。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 045」2017.6.2】