厄年を過ぎたら短所補正でイノベーション
2018.05.29岡村 衡一郎
係長、課長、部長と段階を経て昇進し責任範囲は広がっていく。
各ポジションで求められるものは当然異なる。
しかし、課長の延長線上で部長の役割を全うしようとする人は少なくない。
例えば 4月 1日で部長に昇格したとして、3月 31日までの自分のスタンスの何を変えればいいのかと自問自答して、新たな役割に臨んでいる方はどれくらいいるだろうか。
皆、強みが認められるから昇格していく。
昇格のタイミングが、厄年を過ぎていなければ、強みをさらに伸ばす方向で新たな役割に挑んでいいだろう。
課題は厄年を過ぎてからである。
厄年の背景に精神的肉体的な成長のかげりへの注意の喚起がある。
男性なら 42 歳の前後に知力体力のピークが訪れる。
今までのやり方の強化だけなら伸びが小さくなるのだ。
伸びが小さくなるのだから、伸ばしていくためには新たな対策が必要になる。
具体的には弱みの補完で強みを際立たせるための実践である。
厄年をすぎた三人の部長の取り組みを【表1】にまとめた。
強みの裏側にある弱み、そして、弱みを補完しながら強みを際立たせるために今やっている課題は次の通りである。
A 部長の強みの裏返しは、相手のレベルというフィルターが抜けやすいことだ。
自分と同じ力量で最善の準備をしていなければ NGと判断しがちだ。
B部長のコトの本質を抜き出す視点は時に正論で相手を論破してしまう。
C部長の面倒見のよさが、行き過ぎれば手取り足取りで考えない人を増やしてしまう。
誰でも強みと弱みはコインの裏表の関係にある。
率いる人数が少なかった課長時代は、三人とも強みがベースのリーダーシップが功を奏した。
メンバーの力量不足は、代行でなんとかなった。
しかし、人数が増え、より時間軸が長く、統合的な成果を求められる中で必要になってくるのは、作業遂行のための手足ではなない。
自主的に創意工夫をしてくる頭だ。
「相手の力量と課題遂行の最適値」を考えようと試行錯誤するAさん。
「コトの背後にある気持ちの理解」に悩む Bさん。
「相手と自分の意見の掛け算で答えを出す」のを我慢しながらやっている Cさん。
三者三様の取り組みは、強みを熟成させる弱みの補完の実践である。
貢献はいつでも強みがベースになることは変わりない。
三人の課題は強みとのかかわり方だ。
彼らの部下が皆、明るくなりトライも増えている。
リーダーが自分を高めようとしていると伝わるからだ。
新しい取り組みが起こり続ける現場の共通項は、リーダーの自分の苦手分野をなんとかしようとしている試行錯誤がある。
創意工夫のエネルギーがメンバーに芽生えることこそ狙いだ。
【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 037」2017.3.24】