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つくる人と売る人の壁を乗り越えた 中国料理獅子の「五目スープそば」

サービス業  |  「組織の壁を越えた事例」

 埼玉県所沢市にある、創業25年を迎える中国料理獅子の創業の原点は、当時、都心でしか味わえなかった「本物の味を地元の人に届ける」というものでした。
開業からしばらくの間、中国料理は特別な「晴れ」の日のご馳走として受け入れられてきたものの、ここ数年間は客数が落ち込んでいました。
メニュー変更を繰り返しても成果には結びつかず、本格中国料理をつらぬくべきか大衆路線に踏み切るべきか、確信を持てないまま悶々とした日々を過ごしていたのです。

 業績が下がっている原因を、厨房スタッフはホールスタッフのサービスの低下にあるといい、ホール側は料理の質が下がっているからだと感じていました。
店長が話し合う機会をつくっても、お互いに本気で話し合うことを避け自分にできることだけをやる、という雰囲気は変わりません。

 こういった状況に突破口を拓いたのは、「店全体をどうしていくのか、大衆路線か本格中国料理か」といった抽象度の高い議論を一切やめ、今、売れているモノをとにかく伸ばすという、作戦の変更でした。
それは、店長が背水の陣で臨んだ「五目スープそば」を、まず2倍にするという取り組みです。

 業績が厳しいときほど、今売れている商品・サービスを大切に突破口とするのが重要なのですが、どちらかと言えば短所是正に力を入れてしまう企業は多いものです。
獅子の大衆路線化への迷いも、この一例でした。

 今、売れている商品・サービスに、自分たちの存在意義が表れている。この前提に立ち、よりよき一品に磨く取り組みが革新の起点をなします。
しかし、ないものねだりに変革の舵を切られてしまうケースも多くあります。

 当時、一番の販売個数が出ていた商品は、「五目スープそば」でしたが、この事実にプライドを持っている店舗スタッフは、ほぼいない状況でした。
彼らがお勧めしたい商品は、本格的な中国料理のコースであったからです。

 「五目スープそば」の現実を強みと考えるのも弱みだと思うのも、自分たちの認識次第です。
当初、彼らはこれらを弱みであると認識していました。
弱みが実は強みであるとの見方に変わったのは歴史の遡りでした。
「五目スープそば」を、当時なじみのなかった本格中国料理へ、橋渡しする商品として位置づけ、20年以上前に初代料理長が戦略的に開発した「一品」だと分かったからです。
線立ちの取り組みを知るための遡りが、今売れているものと自分たちの関係を、再認識するきっかけをくれたのです。

 客数減の原因を、厨房スタッフとホールスタッフでお互いになすりつけ合っていた状況は、販売数量が一番だった「五目スープそば」を、「一品」として再度打ち出す取り組みを通じて徐々に改善していきました。
厨房では、お昼のピークタイムに百杯を超える「五目スープそば」をつくる際も一度に仕込みをせず最小単位でつくる。
ホール側では、メニューの見せ方の工夫や接客で、お客様にオススメの仕方を変えるセールストークの研究や、足元商圏に対しての販売促進を集中して行っていきました。

 約30項目にわたる「五目スープそば」のつくり方や売り方の改良を通じて、約2倍の販売増を実現しました。
そして、伸ばす過程でホールと厨房の相互理解が徐々に進み、協働関係が構築されていったのです。

 彼らは「本格中国料理のコース」第一主義を手放し、お客様の中国料理に対する欲求の違いを、幅広く受け入れる柔軟さを、伸ばす過程において手にしました。
安心の味を第一に求める人もいれば、少しの贅沢を楽しみたい人もいるニーズの違いを理解したのです。

 現在の獅子は、料理長渾身のコースの販売個数も合わせて売上を伸ばしています。
コース第一主義を手放して、お客様の利用動機に合わせた提案ができるようになったからです。

 今売れているという機会に焦点をあて、さらに伸ばす取り組みが、業績の向上と、同じ方向を向いて仕事をするチームワーク醸成の双方に影響を与えていったのです。