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COLUMN

いい会社づくり通信

生きざまで店舗ブランド商品を確立し続ける岩本社長

2021.12.07岡村 衡一郎

 以前触れたサイクルゆーとぴあウミノは、ただの自転車店ではない。
中高生の 3 ~ 4 人に 1 人は、ウミノで購入した自転車を乗る。
通学用自転車の支持率 40%越えの地域一番店だ。
全国チェーンの自転車店、ホームセンター、地場の自転車店がひしめきあう中でウミノが選ばれている。
全国を見渡してもレアケースと紹介した。

 一般的に自転車ブランドは、ブリジストン、パナソニック、丸石などが想起されると思う。
それ以外に思いつく方は少ないだろう。
静岡市は「ウミノ」がブランドなのだ。
静岡市では「ウミノ」がブランドであること、が伝わりにくいと思うので補足すると、次の様な感覚である。
静岡市から引っ越してみて、引っ越し先には「ウミノ」がないと初めて知る感じだ。

 私は仕事柄、商品改良に関わらせていただくことが多いが、ブランドがイメージで構築されていくと考えている人の多さに疲れてしまうことがある。
ヨーロッパブランドの影響だろうか、上品なホームページにしよう、セールをしたらブランドイメージが崩れてしまう、など外側の議論に付き合わされることが少なくない。

 イメージもある程度大切だが最も重要なのは商品そのもの。
「ウミノ」で購入した自転車で本当によかった。
商品に対する使用実感や評判がブランドをつくっていくのである。
であるなら、強化すべきはイメージづくりではなく、商品そのものということになる。
一アイテムがブランドをつくるのである。
この一アイテムの重要性は、ブランドがないところからつくりあげた人なら瞬時に理解できる。

 このことは、飲食店のイメージを考えてもらえば、よくわかると思う。
あのメニューがおいしかった。
この味でこの価格なら満足。
また食べに行こう。
あそこの〇〇はおいしいよ。
などなどの商品への支持があってはじめて地域ブランド、地域の名店としての地位が確立していく。
しかし先達の取り組みで出来上がっている評判の上にのっかり仕事をしている人には、なじみがないことなのかもしれない。

 商品の価値/価格に対する納得や感動がブランドをつくる。
イメージや雰囲気がブランドになっていくわけではない。
日本を代表する世界企業のトヨタ自動車でも、それは同じことだ。
丈夫で長持ち、こわれにくい、下取り価格がいい。
これらの商品を通じた実感の積み上がりがトヨタブランドの中心にある。
商品の価値/価格に対する納得の広がりが軸である。

「ウミノ」ブランドをけん引してきたのは、岩本社長の通学用自転車に対する愛だ。
社長の岩本さんは、全国を自転車で回るねっからの自転車乗りだ。
自転車の心地よさも、便利なところも、時に不便になる瞬間も体感値でわかっている。
そんな人の哲学「自転車でもっとも大切なのは目的地まで安心してたどり着けること」が通学自転車につまっている。

 この愛が商品の差を生み、中高生の 3 ~ 4 人に 1 人以上がウミノを選択する。
言われてみれば当たり前かもしれない。
しかし、どれだけ突き詰めて商品に具現化しているかは大きく異なる。
それも、数十万ではなく、数万円のお客さまの購入予算内に、自分の商品に対する哲学を相手のために具現化しうる好事例が、ウミノの通学用自転車だ。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 231」2021.8.6・13】