03-5420-6251

ご相談窓口/9:30〜18:00

COLUMN

いい会社づくり通信

「なくして」効率をあげたその先に

2021.12.06岡村 衡一郎

 前々回、前回で、業務効率アップのキーワード、なくす、束ねる、ちらす、の三つについて触れた。
とある会社の物流部門では、システム投資が現段階ではできない中、仕事の流し方を、三つのキーワードで見つめなおし効率アップにつなげていった話を紹介した。
ホテルや旅館で採用される効率化の方法は「なくす」だろうか。
紙からシステムへ。
チェックインの自動化である。

 お客さまが画面の前にたって氏名を入力して部屋の鍵がでてくる。
画面の付近には、ホテルや旅館のスタッフがいる。
自動化のようで、使用しているが少し違和感が残るのは、私だけだろうか。
お客が慣れるまでの移行期間として、スタッフの方が近くにいるのだろうとは思う。
しかし、宿帳への記入をまってなくていいかわりに、何をするのか。
要は、なくした時間で何をするのかが、不明瞭な状態のままでの自動化でなくすになっていないだろうか。

 効率化は、大切な業務、より付加価値の高い業務に仕事を振り分けていくための手段である。
とある会社の物流部門は、単純問い合わせの一括対応、順番対応で、より効率のよい運び方を考えることや、仕入先との商品改良に取り組む時間を増やしていくために、単純問い合わせを束ねることで、時間をあけた。
ただの仕入れ担当業務ではなく、物流改良、商品改良業務にリーチしていくための手段としての効率アップである。

 チェックインの自動化により、何の時間を増やすのか。
私が指摘しているのが局所的で小さなものなのかもしれない。
しかし、〇〇を増やすために〇〇を減らす。
この考え方は、サービス業ほど、重要になってくるのではないだろうか。
とあるコーヒーチェーンが、手動のエスプレッソマシンから全自動のマシンに変えた。
変えることにより、余裕が生まれるのだが、生まれた時間をよりお客さまに近づく接客にあてているところもあれば、そうでない店舗もある。
スペイン・バルセロナにある同チェーンでは、私が訪れた店だけかもしれないが、日本人の私に対して話しかける時間として活用できていたように感じた。

 とある旅館が翻訳機を導入した。
チェックインの業務効率を上げるためである。
しかしスタッフ人たちは、その翻訳機を効率アップのためだけに使わなかった。
お客さまとの会話を楽しむために、「どこに行かれるのですか」、「ご家族のお好きな食べ物はなんですか」などを翻訳機に入力して、お客さまとの会話を楽しんでいる。

 ホテルや旅館の第一印象はチェックインで決まる。
こんなことは、言われるまでもないことだろう。
でも私は気になるのである。
自動化により空いた時間は、どこに振り分けていくことが適切なのか。
特に現在、宿泊しているお客さまにとって「泊まる」要件は重要視しているはずだ。
リピートする確立の高いお客さましかいない。

 業務効率アップのキーワード、なくす、たばねる、ちらす、は、〇〇を増やしていくためにという目的のもとにさらなる機能を発揮する。
「なくして」効率をあげたその先に、実現していきたい未来像と合わせて、効率アップの手段に取り組んでいこう。
セントラルキッチンのその先に、集中管理のその先に、業務の自動化のその先に。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 230」2021.7.23】