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COLUMN

いい会社づくり通信

反対~! は、改善に生かせるはずの「反応」である

2019.11.18岡村 衡一郎

 反対意見の取り扱いは企業風土を決める、と言っていいくらい大切なものであろう。
硬直化している組織では、反対意見は ないものとされる。
大げさに言えば、上の意見は絶対なのだ。
先日、元大手ホテルチェーンで働いていたY氏の話を伺う機会があった。
ワンマン体質は経営が変わっても、なかなか変わらないという。
ミニワンマンが多数出現して、現場の意見を、特にもっとこうすべきだ、という意見はほとんど通らないという。 

 私は、そのホテルを利便性の面から年に数十回利用するが、タイムマシンに乗って20年前にいったような感覚になる。
当時の最新鋭のまま、深化・進化できていないように感じる。
当然、 現場社員も入れ替わり、違和感をもって進言する場面があるようだが、ほとんど採用されないようだ。
これでは、現場の知恵は商品・サービスに生かせない。
一人の頭脳でみんなが動くという構造は変わっていないのだろう。

 イキイキした仕事は判断の繰り返しの中に生まれる。
かかわる人は、方向性なり、サービスづくりなり、戦略なりを、吟味していく必要がある。
内在的に批判して、自分のものとして考えていく必要があるのだ。
しかし批判は、非難と誤解される。
文句言いというレッテルを張られ、詰め切れていない所、現場が創意を必要とする部分は、ないものとされて動かされていく。

 去年と同じ問題が残っているとしたら要注意だ。
よい会社、よいホテルは、確実に去年とは違う問題解決に臨んでいる。
一人の頭脳だけにたよれば、問題発見のフィルターは固定化されやすい。
完璧な人などいないから、見えないものが見えないままになったままで、業務が行なわれていくことになる。
提供価値の広がりに効くのが反対意見の、反対している理由である。
施策を決めることが、ここを分かっていないと同じことの繰り返しから、 何かをやっていても深化・進化はしていけなくなってしまうのだ。

 変化を味方につけるリーダーは、反対意見の向き合い方が違う。
自分が見えなかった部分を発見できる好材料としてとらえているのだ。
なんで反対しているのだ、と相手を詰めることはない。
反対の 理由を教えてくれと相手に近づく。
相手から見える景色の理解が、 自分の視野を広げるきっかけになると、反対意見を歓迎する。
そして反対意見がないことは、考えていない証しのように考えている。

 大手ホテルチェーン出身のY氏は、そこのことがよく分かっている。
現在、とある旅館のオンリーワン化に取り組んでいるが、彼が主催する改善ミーティングは、参加者にとって気づきの宝庫になっている。
参加する前と終了後に、反対意見の吟味で、一 人一人の意見が発展していくからだ。

 議題の中心はいつも「わが家のようなおもてなし」をするには、である。
一人一人わが家は異なるから意見はまとまらない。
だが、それでいいのだ。
こうしろ、ああしろという先に、サービスの発展がないことは、以前の環境で証明されているのだから。
Y氏は 反対意見の中にある本質を上手に活用する手立てを知っている。
ミーティングの度に少しずつ確実にサービスが深化しているのが、その証しであろう。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 109」2018.11.2】