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COLUMN

いい会社づくり通信

トップダウンは社員の考える力を奪うのか

2019.08.26岡村 衡一郎

 トップダウンを差し控えた方がいいのかも…。
社員の主体性を 引き出すために。
働きがいの向上のために、組織図上の、上か ら下への流れを見直そう、という風潮があるように思う。
確かに、 あれをしろ、これをしろ、という細部にわたっての指示命令は、 考える力を奪っていく。
しかし、真のトップダウンは、現場の創意 工夫を引き出すものだ。
トップダウンか、ボトムアップか、という二元論ではなく、トップダウン×ボトムアップの掛け算が、本当の組織力と考えていった方がいいだろう。

 ボトムアップが引き出されるトップダウンと、社員の考える力を封じ込めてしまうトップダウンは、まったくもって異なるもの。
前者は、方向を指し示す。
未来なり、力を合わせて乗り越えたい目標などを明確にする。
後者は、忠実な指示項目の遂行を求めるものである。
前者が考えるための指針になるなら、後者は考えを封じ 込める枠として働いていく。

 トヨタ自動車の創業当時の「3年でアメリカに追いつけ」は、 力を合わせて乗り越えるべきバーであったから、社員の知恵を必要とする。
そして、一人一人が日々何に向かって頑張っていけばいいのかを明らかにし、チームが機能していくための条件である意義のある目標として共有されていた。
トップの意思がみんなの意思になっていたのだ。

 この逆に自分の思い通りに動かしたい人にとって、トップダウンは細部の業務遂行を指示したものになる。
社員の手と足だけを必要としている訳だから余計なことはして欲しくはない、ということになっていくだろう。
昔、ワンマン経営で有名なグループのレクリエーション施設のアルバイトには、社長が現場を見に来る日は、草むらにかくれろ、という指示が出されていた。
社長の好みに瞬間的に染められた空間で粗相をしないための対策が、かくれる、 だったと聞く。

 トヨタは世界をリードする自動車メーカーとなり、昔ワンマン経営で有名だったグループ企業の経営は、今ほかの人の手に移った。
企業は社会の問題解決のためにある。
部下は自分の所有物ではない。
ここに立脚したトップダウンは、世の中を見て、どんな役割を取ればいいかを考える。
役割を一番よく担うためにチャ レンジが必要だから、社員の能力の開花を必要とする。

 よきトップダウンの共通のキーワードは、世界一、日本一、業界一、地域一である。
競合対策自体が目的ではない。
世界や 業界との比較の上に貢献を考えられる環境は、外向きの思考をつくり、価値に安易に妥協しないチームの力を引き出していく。
そして最終的に他社とのケンカに勝てなければ生き残れない資本のルールの中で生き残る、ゴーイングコンサーンになれるのである。

 部下の主体性がなかなか発揮されない。
内向きで指示をこな していくメンバーが多い。
この問題の根っこはトップダウンそのものではない。
内を向くことを加速させるのが問題なのである。
社会で一番活躍しているイメージを持ちながら、仕事にこだわれるよき会社になるために、世の中と競合他社の情報が一番入ってくるトップだからできる方向づけをしていこう。
方向を失った集団にあるのは内を向き愚痴を言う。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手-Part2 099」2018.8.17】