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COLUMN

いい会社づくり通信

商品の価値/価格を高める不断の実践

2018.02.05岡村 衡一郎

 商品とはなんだろうか。
相手に役立つもの、自分たちの仕事の結晶、お客さまに価値を届ける手段などさまざまな定義ができるだろう。私は商品とは相手の欲求を満たす価値に価格がついたものと定義している。
当然、価格がついていないものは商品ではない。
1個3万円のサプリメントは売れないと考えられるが、仮に一日のカロリーが摂取でき空腹を満たせるなら買う人が出てくるかもしれない。

 人の欲求とは不思議なもので5000 万円以上する車を買う人もいれば、年収1000万円を超える人でも、軽自動車と決めて毎回購入している人もいる。
あんパン98円と栗あんパン380 円、1980円のシンプルなシャツと9800円の素材感とラインがきれいなシャツ、どちらがお値打ちと感じるかは、お客さまが求めるものと価格のバランスによって決まる。

 私は月に十数回ホテルに泊まる。
仕事柄なるべく違うホテルで、低価格~高価格までさまざまなところを選択している。
そこで一泊の価格と価値を他社と比較をしながら、自社を高めようと考えているホテルの少なさを感じる。
逆からみれば再度、自分たちの価値と価格のバランスを見直していけば、相対的に優位なポジションを確保できると言えるだろう。

 価値と価格の関係を考える際に参考にしてほしいのが商品・サービス=価値/価格の四つの型だ。

 一つ目は、価値も低いが価格はもっと低い価格破壊型である。
二つ目は、価値を必要な箇所にのみ絞って削ぎ落とし価格を抑えたディスカウント型。
三つ目が、豊かさを感じる良質な価値で中価格帯の価値改良型である。
四つ目は、価値を究極のところに高め、ここしかないと思えるレベルで提供する価値革新型、世界中の人から尊敬されるブランドである。

 価値革新型は、その人の世界観が熟成し一生かけて一つか二つ生み出すことができる商売人ならチャレンジをしていきたい究極の価値/価格だ。
見せ方をまねしても商品を模倣してもなかなかブランドになれない理由は、生み出す側の価値観が価値革新に至らないところにある。
いずれにせよ一つ上を目指した確実なステップアップが勘所である。
その好事例が良品計画だ。

 無印良品はかつて訳あって安いという、どちらかと言えば価格破壊型のノンブランド商品として生まれた。
そしてバブル期に余分な部分をそぎ落とした良品として自らステージをシフトさせた。
象徴的商品がB5判のザラ紙のノートである。
そして現在、ムジラボという商品ラインアップを核に一段高いステージの脱皮を試みている。
同じところでとどまっていないから輝きが失せない。

 ディスカウント型で支持を得ても、そのままの型で株式上場を果たした企業は極少数派だ。
ディスカウント型から価値改良型にシフトできたことが発展の理由としてあげられる。
価格破壊を試みた牛丼チェーンも価格を戻してきている。
自社の商品をそのままにしておくことも価格も下げることもNG なのだ。

 横軸にはグレードではない質差をつくる価値。
縦軸に一段上のグレードに向けた商品開発が活性化の肝である。
無印良品のように不断の価値/価格を高める実践が企業の活力を決める。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 021」2016.11.11】