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COLUMN

いい会社づくり通信

変化への余白

2017.11.13岡村 衡一郎

 広島東洋カープは、ここ数年、観客を確実に増やしている。
チームの勝率の高さもさることながら、いつも同じではない球場であり続けようとする実践の結果だ。
彼らがつくり出そうしているのは、観客一人一人のわくわく感がある野球場「アミューズメント・ベースボールパーク」である。
野球が大好きな人、少し興味がある人、50 人で野球にいってワイワイしたい人、誰がいつ来ても感動できる場所を目指し、常に新しい楽しみ方を提案し続けている。

 広島東洋カープは、ハードとソフトが一体になり革新し続けるモデルケースだ。
アミューズメント性を高めるために知恵をしぼりだし、毎シーズン新しさを加えるアクションが日々の仕事になっている。
今シーズンの球場は一つの完成品であると同時に来シーズンへの仕掛品、完成することのない理想を追求するスタジアムが広島球場。
彼らは観客の反応を感じながら来期のイメージをふくらませる。

 野球、サッカー、ラグビー、バスケットボール、スポーツビジネスにとって施設に新しい楽しみを加えていくのは生命線。
進化し続けるスタジアムは、どの位あるのだろう。
寝そべってゆっくり見られる、50人でワイワイ行ける、二人でじっくり、ネット裏から選手の吐息を感じながらなどの観戦のし方、選手との距離感や臨場感を高めるための改良など、やった方がいいことはたくさんある。
しかし、実際に毎年新しくしている所の方が、少ないのではないだろうか。

 野球をこれから楽しもうとする入門客、根っからの広島ファンである出門客、双方への魅力を高め続ける広島東洋カープは、スタジアムを進化させる独自の方法を持っている。
観客席のブロックとブロックの間に意図して使わない空白を設けている。
今シーズンの観客の反応を見ながら来季の構想を練るための媒介として空けておくのだ。
「ここであれをやったら喜ばれるだろう」と未来構想を考える場所を持っているのだ。

 変化は水に熱を加えていきお湯が水蒸気になる瞬間と似ている。
いくつものアイデアの断片がつながり具体的なイメージとして立ち上がってくる。
意図して使わないスペースは、今日の仕事の中に未来を考えるスペースをつくる。
「もっとこうしよう」「ああしよう」と水に熱を加えていくようなアクション、いくつもの未完成なアイデアをあぶり出す。
「来年を考える余裕がない、忙しい」のは、多くの企業のマネジャーに共通する悩みの一つだ。
だからといって時間があれば、未来が描けるというものでもなさそうだ。
変化に大切なのは、水を熱し続けるような考え続ける行為だ。

 スポーツビジネスもホテル業も施設に比重が置かれるハード系のビジネス、ソフト部分からのアプローチは後回しになりやすい。
広島東洋カープのスタッフは、今日のお客さまで席を埋め尽くしてしまうよりも、未来のお客さまを考えるスペー
スをソフトからハードを変えるための制約として持った。
空けることで仕事のし方を変えているのだ。

 開業した日は理想のホテルをつくりこむ船出の日、わずかなスペースからでも変化への余白を持つことをはじめてほしい。

【HOTERES「サービス・イノベーション 48手 011」2016.8.26】